姉弟のこと
2026年10月28日
私には姉と弟がいる。
歳の差は、姉が三つ上で、弟は一回りほど離れている。
私は多感な時期をほぼ末っ子として育ってきたので、
気質は、末っ子タイプを秘めていると思う。
大人になって出会ったひと達からは、長女に見られやすい。
そう見られるのは、弟の存在があるからかもしれない。
弟には、
神様がくれたギフトなんじゃないかと、そんな特別な感情がある。
「お腹に弟がいる」と両親から伝えられたときも、
驚きと嬉しさが込み上げて姉と二人でわんわん泣いた。
お腹にいる間も、産まれたばかりの姿も。
全てを見ているから、より特別なのかもしれない。
夜泣きをあやしたし、おむつも替えたし。
母の大変さをよくよく知れば、おままごとに過ぎないけれど、
少しだけ親の代わりみたいなこともできて、
弟はどこまでも可愛くて、あまりに愛おしく感じる。
初めて、自分の命よりも大切で、守りたいと思う存在ができた。
今は、私より身長が高くなり、
声も低くなって、いつのまにこんなに大きくなったんだと驚く。
姉バカなので、どんなに大きくなってもずっと可愛い可愛い弟だけど。
本当はもっと側で成長を見ていたいなと思う。
両親も同じ気持ちだろうな。
愛が重くてごめんね。
弟には弟の人生があるから。
全部受け止めなくていいよ。
必要なときに必要としてくれたらいいから。
とにかく幸せに健康に、のびのび楽しく生きてほしい。
いつだって味方だよ。
こうして、よく弟の話はするけれど、姉の話はあまりしないので、
姉からは、
「何で姉がいないことになってるの?私の方が付き合い長いし、弟はポッと出なのに」と言われたことがある。
ポッと出って。笑
皮肉めいたことを言ってもユニークで、こういうところに姉らしさがある。
何より、姉も、弟を溺愛しているくせにそんなことを言うのだから面白い。
まぁ姉は、私のことが好きすぎるのかな。
とか言うと、うざがられそうだけど。
姉と私は、小さい頃から喧嘩が絶えなくて、
かなり激しい喧嘩もしてきた。
私は絵に描いたようなガキンチョだったので、
弟と性別を取り違えたのかと思うくらい。
姉にとって私は、手に負えない弟みたいな感覚だったのではと思う。
口喧嘩から、段々、手や足が出てきて、
お互いもみくちゃになるような喧嘩もあった。
私は空手をやっていたので、人を傷つけるようなことに技を使ってはいけないと分かっていたけれど、
手加減できるほど姉は弱くなくて、お互い負けず嫌いが出て、収拾がつかなくなることもあった。
そんな時は、母がくる。
「ちょっと来なさい」と言われ、
広い駐車場の真ん中に連れ出された。
姉と私は向かい合わせに立った。
二人して、叱られるんだと覚悟しているところに、母が言った。
「レディー、ファイト!」
母の手刀が下から上に振り上げられ、
ラウンドツーのゴングが鳴った。
姉と私は状況が掴めずしばらくフリーズした。
お互いの呆気に取られた顔が目に入る。
広い駐車場で私達は何をしているんだと我に返って、
笑った。
泣き笑いのような感じで、しばらく笑った。
忘れられない思い出だ。
姉とは喧嘩してばかりだったけれど、
ふざけ合ったりもしたし、実は楽しかった記憶のほうが多い。
仲が良かったと私は思っている。
姉が時折、私のために泣いているところや怒っているところを見ると、普段は見せない表情に少しびっくりしたし、嬉しかった。
病気になって心配をかけたときも、姉はこの世の終わりかのように泣いていた。
この人は、人の為に泣ける人なんだ。
強くて優しい人だ、と思った。
良いことも悪いことも共有して、一緒に成長できて良かった。
そんな姉には、今、可愛いベイビー達がいる。
甥っ子が二人。
とんでもなく可愛い。
送られてくる甥っ子の写真や動画を見て、
蕩けるくらいニヤニヤしている。
そして、これほどまでに甥っ子が大切で、可愛いと感じるのは、私にとって姉が特別だからということも実感している。
連絡をマメに取りあったり、沢山会話をしたりするほうではないかもしれないけれど、
私達らしい関係があれば、それでいいと思う。
照れくさくて普段は口にできないので、
こんな風に書いてみた。
出来れば読んでほしくない、という気持ちと、
ほんの少しだけ読んでほしい気持ちがある。
という気持ちを、ここに書いてしまっている時点で恥ずかしいので、
このくらいにしておく。
三姉弟、私は気に入っている。
姉が大学に行ったり、弟が小さいうちに私は上京してしまったりして、なかなか三人揃って一緒にいる時間がなかった。
覚えている三姉弟でのことは、
弟の可愛さにひたすらノックアウトされる、姉と私の構図だ。
これからはもっともっと、三姉弟で思い出を作っていきたい。
これはただ私が願っていることだ。
家族と離れた場所にいるから、
本当はもっと近くにいたいし、一緒に過ごしたいと、そう思っていたんだと思う。
物理的な距離に対してだけではなく、
私にとって、思い出があるかないかはかなり重要なのかもしれない。
どんな些細なことでもいいし、
いずれ記憶から消えてしまってもいい。
幸せな思い出は身体に刻まれるから。
忘れても身体が忘れないはず。
だから出来る限り、大切な人とは大切に時間を過ごしたいと思う。
甥っ子二号がもう少し大きくなったら、みんなで旅行でも行きたいな。
これからもよろしくね。
心から、素晴らしい、素敵なお言葉。そして深い「想い」。
芋生様より遥か年長のわたしですが、秋の、しかも急に寒気が強くなった今日、心に沁み、心を温めてくださいます。芋生様の文章はすべてですが、このエッセイも繰り返し繰り返し拝読させていただきます。もちろんご出演作は繰り返し繰り返し鑑賞させていただいております。昨日も『ピンカートンに会いに行く』を鑑賞させていただきました。
ご家族、そして敏の離れた弟様への想い。芋生様のお心がストレートに伝わってきて、感動いたします。
>自分の命よりも大切
恐縮ですが個人的なお話をさせていただきますと。わたしにとってこのような存在が、七年前大手術をし、今年二月には医師から「もう無理だ」と実質言われた母です。そのとてつもない状況を乗り越え、今は自宅で、わたしの隣で、もちろん芋生様のご出演作もいつも鑑賞しさせいただいております。
超高齢の、要介護5の、認知機能もすっかり落ちた母を、いい年した息子が「命を懸ける」なんて、世間の常識では「まともじゃない」ととられるのもわかっておりますが、こればかりはもうどうしようもない。母とわたしの歴史がそうさせたのですから。そしてこれが「愛」なのだとも思っております。
長々とわたしの話、本当に申し訳ございません。
ただ、今回のお言葉を拝読しながら、やはり感じたのは芋生様の強く深い「愛」です。
弟様への愛、お姉さまへの、甥っ子様への、ご家族様への愛、そして映画への、文藝への、その他芸術への愛…いつも徹底的に応援させていただきます。
そういえばあの大傑作『こいびとのみつけかた』の前田弘二監督、『Man』や短編映画上映で頑張っておられますね。『こいびとのみつっけかた』を創ってくださった前田監督も、もちろん熱烈おうえんしております。
寒くなりました。お風邪など召されぬよう、充実した日々をお過ごしくださいね。